株式の譲渡制限の仕組みと承認機関の工夫、事業承継における設計例
株式譲渡制限の基本ルール
会社法における株式譲渡制限は、旧法よりも柔軟になっています。
具体的には、譲渡の承認機関を定款で定められる点です。
・取締役会設置会社の原則:取締役会が承認機関
・非設置会社の原則:株主総会が承認機関
・定款変更での例:取締役会ではなく株主総会、または代表取締役・取締役全員一致決定など
その他の確認事項
1.一部の株式のみを譲渡制限株式とすることができる
例:「株主が取得者である場合は承認不要」など
2.譲渡禁止はできない
例:「取得者は株主に限る」とすると事実上譲渡禁止になるため不可。
つまり、定款規定は「制限を緩くする」方向には可能ですが、「厳しくする」方向には制限があります。
承認機関を工夫する方法
通常は「取締役会の承認」がノーマルパターンですが、事業承継の場面では次のような検討がなされました。
・種類株主総会を承認機関とする案
→ 兄弟4人が株主の場合、特定の種類株主総会に承認を委ねることで、取締役会や株主総会より柔軟に調整できる。
→ 特別利害関係が問題とならないため、代表取締役自身の承認権限より適切。
ただし、種類株主総会を承認機関にすると、実質的には「株主の意思に従って自由に譲渡できる」のと大差なくなり、譲渡制限の実効性が薄れる可能性があります。
公開会社化への注意点
譲渡制限がない株式が存在すると、その会社は「公開会社」となります。
公開会社では取締役の選解任に関する種類株式やいわゆる黄金株は発行できないため、事業承継設計においては大きな制約になります。
実際の結論
最終的には「次世代の承継に関する重要事項は株主全員の総意で決める」と整理し、承認機関は普通に株主総会とし、決議要件を加重して全員一致で承認を必要とする形に設計することになりました。
また、否決された場合には予め買受人を定める方式も工夫の余地があるとされました。
本コラムのまとめ
・株式譲渡制限は承認機関を定款で柔軟に設定できる。
・譲渡禁止は不可、承認不要の緩和規定は可。
・種類株主総会を承認機関にする工夫も可能だが、実効性に注意。
・一部株式を譲渡制限株式としないと公開会社になり、黄金株などが発行できなくなる。
・実務では「株主総会で全員一致承認」とする加重決議方式が有効な対応例。
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本日は、株式の譲渡制限の仕組みと承認機関の工夫、事業承継における設計例を解説いたしました。
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