不動産の贈与登記とは?司法書士が解説する手続・費用・注意点
要点サマリ
・贈与登記(原因「贈与」の所有権移転)は、評価額×2.0%の登録免許税が基本。相続移転の0.4%と比べ負担が重くなりがちです。
・住宅の不動産取得税は本則4%ですが、住宅要件を満たせば3%の軽減(時限措置)があります。贈与でも取得原因・用途で適用可否が変わるため、実行前に確認を。
・受贈者には贈与税が生じ得ます。相続時精算課税(累計2,500万円+R6以降は年110万円控除)を選ぶ選択肢もありますが、選択後は暦年課税に戻れません。
「贈与登記」とは何か(遺贈・死因贈与との区別)
・贈与(生前):当事者合意で無償移転。登記原因は「贈与」。
・死因贈与:贈与者死亡を停止条件にした契約。登記原因・必要書類が異なる。
・遺贈:遺言で指定する無償移転。登記は「遺贈」を原因として申請。
登記は「いつ」「どの法律行為で」権利が動いたかを原因欄に明示して申請します(記載例は法務局の雛形参照)。
手続の全体像(タイムラインで把握)
Step0|事前確認
・物件特定:登記事項証明書、固定資産評価証明書を取得
・税務設計:暦年課税/相続時精算課税の選択、取得税の軽減可否
Step1|契約
・贈与契約書(目的物・原因・日付・持分・負担付の有無)
・贈与者実印・印鑑証明書
Step2|登記申請(原因:贈与)
・申請先:不動産所在地の法務局
・方式:窓口/郵送/オンライン
・税:登録免許税(評価額×2.0%)。評価額は固定資産課税台帳の価格が原則。
Step3|完了後
・登記識別情報(12桁符号の通知)を受領・厳重保管。以後の売買・担保で必要。
・名義確認:最新の登記事項証明書を取得
・税務フォロー:受贈者の贈与税申告(原則、翌年2/1〜3/15)
必要書類チェックリスト(実務用)
贈与者(渡す側)
・登記識別情報(旧:権利証)
・印鑑登録証明書(契約で実印使用のもの)
・固定資産評価証明書(登録免許税の計算に使用)
受贈者(もらう側)
・住民票の写し
・贈与契約書(原本)
・登記申請書(原因・日付の整合注意)
→記載欄・様式は法務局の「所有権移転(贈与)」記載例を参照。
費用の内訳と概算の目安
登録免許税(登記時)
登記原因 | 税率 | 根拠 |
---|---|---|
贈与による所有権移転 | 評価額×2.0% | 国税庁タックスアンサー No.7191。売買には時限軽減(例:1.5%)がある一方、贈与は軽減対象外が原則。(国税庁) |
相続による所有権移転(比較) | 評価額×0.4% | 同上(相続枠)。(国税庁) |
課税標準の「評価額」は固定資産課税台帳の価格が原則。
不動産取得税(取得時)
本則4%。住宅要件を満たすと3%へ軽減(令和9年3月31日まで)。課税標準控除(新築1,200万円/中古は新築相当控除)もあり。
贈与税(受贈者)
・暦年課税:基礎控除110万円超に累進課税。
・相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与税なし+R6以降は年110万円控除導入。相続時に合算清算(選択後は暦年へ戻れない)。
書類交付手数料(目安)
住民票・印鑑証明・固定資産評価証明・登記事項証明:各数百円〜(自治体相場)
よくある落とし穴(登記・税務)
原因・日付の整合
登記原因(贈与の成立日)と契約書・申請書の記載がズレると補正要請の典型。雛形の「原因」「日付」欄を必ず突合。
売買“風”の低額設定はみなし贈与リスク
著しく低廉な売買は贈与認定の可能性。対価設定は時価の裏づけを。
取得税の軽減は“使えるかどうか”が命
住宅か否か、床面積・自己居住要件などで天と地。実行前に適用可否を役所・条文で確認。
識別情報の管理不備
登記識別情報(12桁)は再発行不可。紛失対応は別の本人確認手段(事前通知等)で手間・時間増。保管体制を決めてから受領。
相続でやった方が総額が安いことも
登録免許税は相続0.4%と低い。贈与の前に相続税・贈与税・取得税を横断で試算し、総額最適を。
申請書の記載
・登記の目的:「所有権移転」
・原因:「贈与」「令和〇年〇月〇日贈与」
・添付情報:登記原因証明情報(贈与契約書)、評価証明、印鑑証明、住民票、識別情報 等
公式の記載例(所有権移転・贈与)をベースに、物件数・持分・共有者の有無を調整。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、不動産の贈与登記とは?司法書士が解説する手続・費用・注意点について解説いたしました。
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