吸収合併で消滅した会社の役員賞与はどう扱うべきか?
消滅会社の決算承認と役員賞与の疑問
吸収合併により消滅した会社について、「定時総会の時期なので事業報告や計算書類を承認したい」「役員賞与を支払いたい」といった相談を受けることがあります。
しかし、合併によって消滅した会社は株主総会を開催できません。
そのため、消滅会社単独で事業報告や計算書類を承認することはできないのが原則です。
報告の位置づけにとどまるべきであり、存続会社の取締役会で承認や報告を行うことは可能と考えられます。
このような背景のもと、合併消滅会社の役員賞与をどう扱うかが問題となります。
賞与支給の位置づけ
役員への支給は通常、以下の三つに区分されます。
・通常報酬
・臨時報酬(賞与)
・退職慰労金
今回のように、合併期日が消滅会社の事業年度末日の翌日であったため、合併前に賞与を支払えなかった場合、消滅会社の取締役への賞与を「後払い」する形が検討されます。
ここでのポイントは、消滅会社の役員が存続会社の取締役に就任しているかどうかです。
・就任している場合:存続会社の株主総会で決議された報酬枠の範囲内で、取締役会が賞与支給を決議できると考えられる。上限を超える場合には株主総会の決議が必要。
・就任していない場合:性質的には「退職慰労金」と解され、株主総会決議が必要になると考えられる。
事業年度の相違と手続の工夫
存続会社と消滅会社で事業年度が異なる場合、報酬決議の位置づけはさらに複雑になります。
通常報酬は事前に取締役会で決議されるものですが、本件のように後払い的に賞与を決定するのは異例です。
したがって、「消滅会社の役員としての賞与を後払いする」という事情が分かるように決議内容を明確化することが適切とされます。
実務上の判断ポイント
結論として、
・存続会社の役員となった場合は、報酬総額の範囲内で取締役会決議により賞与支給が可能
・存続会社に就任していない場合は、退職慰労金と整理し、株主総会の承認が必要
・合併前に賞与を支給できなかった場合、後払いとして扱うしかないが、決議の位置づけを明確にすることが重要
もっとも、実際には100%親会社による吸収合併など、グループ内の整理として大きな実害がないケースも多いでしょう。ただし、法的根拠と実務慣行を踏まえた慎重な対応が必要です。
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