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コラム

効力発生と効力発生日の整理「いつ何を満たしていればよいか」を間違えないために

結論を先に(全体の考え方)

効力発生日は“契約・決議で定めた日”に到来し、その到来までに定められた前提手続(株主総会承認・債権者保護・株券提出・買取請求等)の充足が必要です。
・「効力発生日=決議日」を採る場面もありますが、前提手続の整合(特に買取請求や提出手続の期間)が崩れないように設計することが大前提です。
・迷ったら、「効力発生日の午前0時までに何が完了しているべきか」を逆算し、日程と決議文言で担保します。

基本ルール(吸収型再編/定款変更/資本減少)

手続 効力発生日の決め方 効力発生日までに必要な前提 当日設定の可否(典型)
吸収合併・吸収分割・株式交換 契約で定める 株主総会承認(要件該当時)/債権者保護の完了/株券提出・通知/買取請求の手続完了 原則可。ただし前提が当日までに完結していることが条件
新設合併・新設分割・株式移転 設立登記が効力要件(事実上は日程で指定) 必要な承認・保護手続の完了 設立登記時に効力発生
定款変更(株式譲渡制限の新設) 明示がなくても事実上効力日を定めて運用 株券提出の公告・通知/買取請求期間の確保 当日設定は設計注意(下記参照)
資本金の額の減少 決議事項(効力日を決める) 債権者保護完了 当日も可(前提完了が条件)
資本準備金の額の減少 決議事項(効力日を決める) 債権者保護(欠損填補等の例外あり) 当日も可(同上)


論点A・株主総会決議日=効力発生日は許されるか

結論としては可能です。ただし、次を満たすことが前提です。

債権者保護手続がすでに完了していること。
株主の買取請求手続き(対象となる場合)について、反対通知→総会での反対→買取請求期間の流れが破綻しないこと。

ここが最大の落とし穴です。買取請求は「効力発生日の20日前〜前日」が原則。
総会での反対が前提となるため、買取請求期間中に総会が開催される設計(=効力発生日は少なくとも総会の翌日以降)が最も安全です。
・株券提出・通知が必要な手続なら、提出期限を効力発生日までに設定しておくこと。

実務メモ
実務では「効力発生日=総会翌日」が設計ミスを起こしにくい無難解です。やむを得ず当日効力を狙う場合は、議事録・通知・公告・日程表で期間の整合を明確に。

論点B・株式譲渡制限の新設での効力日設計

・法は「効力日を決議せよ」とは明記していませんが、株券提出の公告・通知や買取請求期間のため、実務上は効力日を決めておくことが不可欠です。
・したがって、定款変更案に附則(効力日条項)を置くか、期限付決議で効力日を明示しておくのが確実です。
効力発生日=総会日とすると、買取請求期間と総会日が逆転しがちなので、翌日以降を効力日にする運用が安全です。

論点C・期限付決議の「合理的期間」

・明確な法定基準はありません。実務目安としては、
・株主総会決議:次回定時総会まで(約1年)を上限目安
・取締役会決議:次回取締役会まで(概ね3か月)を上限目安

ポイントは、期限までに前提手続が確実に完了する蓋然性と、決議と実行の間隔に合理的理由があること(例:移転準備・対外調整・定例会に合わせる等)。

よくある設計ミスと回避策(チェックリスト)

[効力日の前日までに]
□ 債権者保護手続は公告・個別催告〜異議期限経過〜弁済等まで完了済みか
□ 株主総会の承認は効力日前日までに取得済みか(要件該当時)
□ 買取請求期間は総会開催を含む期間設計になっているか(総会日前に反対通知→総会で反対→期間内に請求)
□ 株券提出公告・通知は「効力日までに提出」の設計になっているか
□ (期限付決議)期限設定の合理性が議事録に記載されているか(理由・必要性)

[やむを得ず当日効力にする場合]
□ 当日効力でも矛盾がない(前提手続が当日までに完結)ことを文書で確認
□ 議事録・附則・通知文の文言を当日効力前提に精査
□ 取引先・官公庁への周知・協議を事前に済ませておく

本コラムのまとめ

効力発生日は日付の指定だけでなく「到達すべき状態の指定」でもあります。
買取請求・株券提出・債権者保護などの期間ものは、効力日から必ず逆算して日程化し、議事録・附則・通知・公告で齟齬が出ないように固めるのがプロの設計です。
実務安全策は一貫して、「効力日は総会翌日(または前提完了の翌日)」を原則にし、例外は文書根拠と理由を残すことです。

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本日は、効力発生と効力発生日の整理「いつ何を満たしていればよいか」を間違えないためにについて解説いたしました。
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