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株主名簿の名義書換請求と組織再編における取扱い

名義書換請求の基本類型

株主名簿の書換えは、株式譲渡に限らず、増資や新株予約権の行使、組織再編など様々な場面で必要になります。
株券不発行会社における名義書換請求は、大きく3つの類型に分けられます。

1.取得者と名義株主による共同請求
 原則。譲渡人・譲受人が共同で請求し、真正を担保する。

2.取得者の単独請求
 競売・判決・相続など、客観的な証拠がある場合に限られる。

3.請求不要(発行会社が自ら書換え)
 募集株式の発行や自己株式の処分など、発行会社自体が当事者である場合。

株式交換・株式移転の場合の疑問

株式交換や株式移転においては、次のような扱いになります。
完全親会社が対価として発行する株式 → 発行会社自身が当事者であるため、名義書換請求は不要(類型3)。
完全子会社の株主から親会社が取得する株式 → 取得者(親会社)から子会社に対して単独請求が必要(類型2)。

この点について、「完全子会社自身が当事者であるのに、なぜ自ら名義書換できないのか」という疑問が生じます。
特に株式移転では、親会社は設立前の段階で存在していないため、設立直後に子会社に対して名義書換請求を行うことになります。

他の組織再編との比較

合併
・消滅会社が存続会社株式を所有していた場合 → 自己株式取得となり、名義書換請求不要。
・消滅会社が第三会社株式を所有していた場合 → 包括承継により取得者の単独請求で名義書換可能。

会社分割
・分割会社が有する株式を承継会社に承継させることはできないため、対象は原則他社株式のみ。これは共同請求の対象。
・人的分割(株主に承継会社株式を割り当てる場合)では、分割会社と株主の共同請求が必要。ただし、手続の主体は会社であるため、実務的には「会社単独でできないのか」という違和感が残る。

対抗要件の問題

名義書換を行わなければ、新株主は会社や第三者に対抗できません。
株式交換や株式移転の場合にも特別扱いはなく、完全親会社が名義書換請求を怠れば、対抗要件を欠くことになります。
実務上は親会社が当然に請求するため大きな問題は生じにくいですが、制度設計として「なぜ請求が必要なのか」という疑問は残ります。

本コラムのまとめ

・名義書換請求は「共同請求」「単独請求」「不要」の3パターン。
・株式交換・株式移転では、発行会社が当事者であるにもかかわらず単独請求が必要な場面があり、制度的に違和感が残る。
・合併や会社分割と比較すると、組織再編ごとに名義書換の要否・方法が異なるため、実務では個別に確認することが不可欠。
・名義書換を怠ると対抗要件を欠くため、特に親会社による請求漏れには注意が必要。

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本日は、株主名簿の名義書換請求と組織再編における取扱いについて解説いたしました。
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