取締役会を共催できるか?実務上の違和感と検討ポイント
株主総会・種類株主総会の共催の取扱い
株主総会と種類株主総会を同日に開く場合、実務上は「共催」とされます。
ただし、法務局の運用では、議事録は別々に作成することが求められています。
そのため、実務では議事録を2通に分け、開催時間を共通としつつ、共催である旨を記録に残す対応が行われています。
取締役会の「共催」という事例
今回の案件では、完全兄弟会社2社(取締役・監査役が全員共通)が同日に取締役会を開催しました。
担当者からの説明では「共催」とのこと。
・実際に登記申請をしたところ、異なる管轄法務局に申請したため問題なく受理されました。
・弁護士の見解としても「問題なし」との回答が得られていました。
では、もし同一管轄だった場合でも問題なく通るのか――という点が論点となります。
共催に関する検討ポイント
・秘密保持
取締役会は原則非公開ですが、役員が共通であれば秘密漏洩の問題は生じにくい。
・オブザーバーの扱い
担当部署の人員は共通でない可能性が高いが、そもそも取締役会はオブザーバーを呼べるため、取締役全員が同意すれば他社の人間が同席しても制度上問題はない。
・議案の共通性
議題には共通部分もあれば、各社固有のものもある。報告事項などは共通でない場合が多いが、それ自体は共催の妨げにはならない。
・株主との関係
株主が異なる場合の扱いが気になるが、取締役会は株主の直接の場ではないため、議決権行使者である取締役が共通であれば大きな支障はない。
別会社の株主総会を共催することは可能か?
ここで視点を変えて、複数会社の株主総会を共催する可能性を検討すると、
・決議事項の内容が同じであっても、各会社で別々の議案である。
・たとえば同じ取締役候補者を選任する場合でも、A社の決議とB社の決議は別物。
・よって「議案が共通」ということはなく、厳密には共催とは呼べない。
実態としては、
A社の第1号議案 → B社の第1号議案 → A社の第2号議案 → B社の第2号議案…
と混ぜて審議しているに過ぎず、形式的には「順番に別々の総会を開いている」と評価されることになります。
実務上の結論
取締役会や株主総会の「共催」という概念は、法制度上明確に規定されていません。
しかし、役員・株主が同一である場合には、同一時間で開催したとしても実質的な支障は少ないと考えられます。
もっとも、議事録の表現や運営方法には違和感が残るため、現場では「混ぜこぜで進行した」という実態をどう記録に残すかが課題です。
本コラムのまとめ
・株主総会と種類株主総会は「共催」とできるが、議事録は分ける必要がある。
・取締役会についても、役員が同一なら共催しても実務的支障は少ない。
・ただし、別会社の株主総会を「共催」と呼ぶのは適切でなく、形式上は「別々の総会を同日に順番に開いている」と理解すべき。
・議事録の記載方法やオブザーバーの扱いなど、現場運用には注意が必要。
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