組織再編時の株式買取請求にかかる通知・公告、株主総会決議との先後関係は問題となるか
株式買取請求にかかる通知
株式買取請求に関する通知は、会社法797条4項に定められています。
第797条4項
次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
一 存続株式会社等が公開会社である場合
二 存続株式会社等が第795条1項の株主総会の決議によって吸収合併契約等の承認を受けた場合
条文の文言が「承認を受けた場合」と過去形になっているため、株主総会決議前に通知を行う場合は公告に代えることはできないのではないか? という疑問が提起されます。
株主総会決議前後で公告代替の可否が変わるのか
・株式買取請求権を行使できる期間は「効力発生日の20日前から前日まで」。
・株主総会決議が済んでいれば、株主はすでに招集通知で合併等を知っている。
・株主総会に出席し反対した株主しか請求できない以上、決議後に改めて通知をする意味は薄い。
・一方、株主総会前に通知する場合は、株主がこれから反対表明をする余地があるため、個別通知が必要と考えられる。
このように考えると、条文の「承認を受けた場合」は手続全体の流れを表現しているに過ぎず、通知と株主総会の先後関係は公告代替の可否に影響しないと解する余地があります。
実務と学説の状況
・文献には「通知は株主総会の前でも後でも良い」との記載が見られるが、詳細な解説は少ない。
・実務では、株主総会の招集通知自体に「合併契約の概要(相手方の商号・本店等)」が記載されるため、通知事項は既に網羅される。
・そのため「株主総会決議後に改めて個別通知を行う必要はないのではないか」との見解が有力。
結果、株主総会との先後関係を問わず公告に代えることができるといえるでしょう。
実務上の結論
・公告代替の可否は、株主総会決議の前後にかかわらず認められると解するのが合理的。
・条文が過去形で書かれているのは、手続全体を通して「承認を得た場合」を指すにすぎないと理解できる。
・実務では、株主総会の招集通知や公告の内容により、株主に十分な情報が提供されていれば、別途個別通知を繰り返す必要はない。
本コラムのまとめ
・会社法797条4項は、存続会社が公開会社である場合や、株主総会承認を得た場合には、株式買取請求に関する通知を公告で代替できると定める。
・文言上は株主総会決議後に限定されるように見えるが、実務上は決議前後を問わず公告代替は可能と解される。
・招集通知や公告により通知事項はすでに網羅されるため、株主総会後に改めて個別通知を行う実益は乏しい。
・学説上も「先後関係を問わない」とする見解が支持されており、実務上も同様の運用がされている。
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本日は、組織再編時の株式買取請求にかかる通知・公告、株主総会決議との先後関係の問題について解説いたしました。
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