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コラム

会計監査人と株主名簿管理人の合併に関する登記実務

制度の概要と基本的な登記対応の違い

会計監査人や株主名簿管理人といった法人が、合併によって他の法人に吸収されるケースは稀ではあるものの、実務上無視できない論点です。
特に登記手続においては、それぞれ異なる対応が求められるため、注意が必要です。

まず、株主名簿管理人が合併によって消滅した場合の登記についてです。
たとえば、A社が株主名簿管理人を務めていたところ、B社に吸収合併されてA社が消滅したという場合、この変更に伴う登記は、「合併」による株主名簿管理人の変更登記として扱われます。
この場合、登記原因は「合併」とし、添付書類は不要とされているのが実務の扱いです。

一方、会計監査人である監査法人が合併によって消滅した場合には、これとは異なる対応が必要です。
たとえば、会計監査人Aが監査法人Bに合併されて解散した場合、形式的には後継者が存在するように見えるものの、登記実務上は「Aの退任」+「Bの就任」という形で別々に登記する必要があります。こちらは合併による包括承継を前提としつつも、あくまで個別登記として扱う点が特徴です。

このように、いずれも法人であるにもかかわらず、会計監査人と株主名簿管理人では、合併時の登記実務に明確な違いがあることがわかります。

株主名簿管理人の合併登記に関する実務と注意点

株主名簿管理人が合併によって消滅し、存続会社に業務が承継される場合、登記実務上は「合併」を原因とする株主名簿管理人の変更登記を行います。
この登記については、基本的に添付書類は不要とされており、実務上の手続き負担は比較的軽い部類に入ります。

会計監査人の合併と登記実務の相違点

株主名簿管理人の合併における登記対応がシンプルであるのに対し、会計監査人が合併によって消滅する場合の登記実務は、全く異なる処理が求められます。
具体的には、会計監査人である監査法人Aが、監査法人Bに吸収合併されて解散した場合、以下の2つの登記が必要となります。

・監査法人Aの退任登記(合併による解散を原因とする)
・監査法人Bの就任登記(合併による包括承継を前提とする)

このように、形式上「交代」があっても、合併による変更登記ではなく、別個に退任と就任の登記を行うのが原則です。

ただし、就任側については、合併により包括承継されたものとみなされるため、就任承諾書は不要です。
添付書類は特にありません。

登記原因の選定に注意

一方で、株主名簿管理人の変更登記が「合併」を登記原因として行われるのに対し、会計監査人の場合は「合併」という記載は登記原因とはなりません。これは、登記の性質が異なることに起因しており、たとえ両者が法人であっても、同一の処理はされないのです。
このように、両者は登記上の取扱いに大きな差があるため、実務対応においても登記原因の選定・添付書類・申請書類の内容に誤りがないよう、十分な確認と事前準備が求められます。

株主名簿管理人と会計監査人の登記実務比較

この点をわかりやすく整理すると、以下のようになります。

項目 株主名簿管理人 会計監査人
合併時の登記手続 合併による変更登記 退任登記+就任登記
登記原因の記載 「合併」 「退任」・「就任」
添付書類 原則不要 合併記載のある登記事項証明書(会社法人等番号で可)
就任承諾書の要否 ―(変更扱い) 不要(包括承継のため)

このような相違点は、実務担当者にとって見落としやすいポイントでもあり、登記申請前には必ず制度趣旨を踏まえた確認が不可欠です。特に、株主名簿管理人の変更について「合併を登記原因とするだけで済む」と誤認し、会計監査人でも同様の処理をしようとすると、補正や却下の対象となる可能性があります。

登記上は些細な違いに見えても、背景にある制度的な立ち位置が異なることを常に意識しておくことが、プロフェッショナルな対応には不可欠です。

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本日は、会計監査人と株主名簿管理人の合併に関する登記実務について解説いたしました。
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